概要
享保年間に染井の植木職人が手なぐさみに花壇菊を作り、やがて造形に趣向を凝らして、菊細工とした。一方、大阪の人形師・大江中平衛が歌舞伎役者の似顔絵で等身大の人形と生き人形と名付けた。現在受け継がれている菊人形は、この菊人形と生き人形が融合して完成したものである。菊人形としてのスタートは弘化元年、巣鴨霊感院のお会式の飾り物として作られた日蓮の滝の口御霊に始まるといわれている。見せ方には、物語に沿った場面を順に見せる見流しと段返しがある。段返しというのは、舞台の下に用意されたせり上げ、天井からの吊り下げ、舞台の袖の書き割りを駆使し、劇場スタフが監督の下に一糸乱れぬ連携作業を行うショーである。客席の天井裏にはたくさんの花提灯が吊り込まれ、フィナーレでは観客の知らないうちに天井が割れて、賑やかな鳴り物とともに灯が入り、客席の上に降りてくる。幕間なしのスピーディーな舞台転換に観客も仰天したものである。こうした技術は歌舞伎の段返しから応用し、国技館の大空間いっぱいに仕掛けたのが乃村泰資であった。